【化学業界ニュース2024年4月号】化学業界のニュースを7本厳選してご紹介!

2024年4月に化学業界で生じたニュースを厳選してご紹介します。

目次

動画で説明:化学業界ニュース2024年4月号

各ニュース記事:化学業界ニュース2024年4月号

①JIC、JSRへの1兆円TOB成立

半導体材料大手のJSRは、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)によるTOB(株式公開買い付け)が4月16日に成立したと発表しました。このTOBは半導体素材メーカーの国際競争力を高めることを狙いとしているとのことです。

買付代金は1株当たり4350円、総買付代金は約9000億円、準有利子負債を含めると1兆円規模になる見込みです。

JSRは今後所定の手続きを経たあとに非上場化を予定しており、具体的な時期は未定です。

なお、JSRの上場最後となる決算は赤字で着地しています。今後も経営や事業の状況はHPを通じて公表すると発表しています。

ニュース出典元

JSR株式会社:JICC-02株式会社による当社株式等に対する公開買付けの開始予定に関するFAQ

②信越化学工業が群馬県伊勢崎市に新工場

信越化学工業は半導体露光事業の工場を群馬県伊勢崎市に建設すると発表しました。

半導体露光事業は主にフォトレジストやフォトマスク、EUVレジストなどが該当します。この事業の拠点は

  1. 直江津工場(新潟県)
  2. 武生工場(福井県)
  3. 信越電子材料股份有限公司(台湾/雲林県)

に引き続き4つ目です。

信越化学グループとしての国内拠点新設は実に56年ぶりとのことで、第一期整備の工場は2026年に稼働開始する予定です。

ちなみに新工場の敷地は約15ヘクタール、東京ドーム3個分相当とのことです。

ニュース出典元

信越化学工業株式会社:プレスリリース(2024/4/9)

③エチレンプラント稼働率は2024年3月78.7%と低調

エチレンは中国を筆頭とする後発国の増産により市況が悪化している状態で、7カ月ぶりに稼働率80%を下回りました。

さらに、定期修理に入った設備の影響で生産量も低下しており、好不況の目安とされる稼働率90%を20カ月連続で下回っています。

やはり背景には供給過剰という構造的な課題があるため、各社対応に迫られています。

ニュース出典元

石油化学工業協会:実績概要メモ

④レゾナックHDが石化事業の一部をスピンオフ検討

レゾナックHDは同社の石化事業に関して、パーシャル・スピンオフの検討を開始すると発表しました。

そもそもスピンオフは企業内の一部門・一グループを分離して、独立した法人として資本関係から外すことを指します。

そして、パーシャル・スピンオフとは、親法人に子法人の発行済株式の一部を残して行うスピンオフのことを指します。

パーシャル・スピンオフにおける株式の保有割合は2割未満と制限があるものの、パーシャル・スピンオフを使えば資本関係を残したまま石化事業を独立させることができるため、レゾナックがかねてより公言している半導体や電子材料事業に経営資源を集中できることができます。

パーシャル・スピンオフのメリットはそれだけではなく、コングロマリットディスカウントという、「同業種の専業企業に比べて多角化している企業の企業価値が市場において低く評価される事象」の解消も期待できます。

レゾナックとしても石化事業は連結売上高の約2割を占める重要な事業と位置付けており、今後は2~3年後に実施するかどうかを念頭に、年度末に向けて検討を進めていくとのことです。

ニュース出典元

レゾナックHD:プレスリリース(2/14)

⑤三洋化成工業がSAP事業から撤退

三洋化成工業は2024年3月25日に、高吸水性樹脂(SAP)事業から撤退することを発表しました。

SAPは高吸水性樹脂の略で、自重の数百倍から1000倍の水を吸収する性質を持つことから、紙おむつを中心にナプキンなどの衛生用品や、農業・園芸、ペット関連、土木・建築など幅広い分野で使用されています。

SAPはもともと三洋化成工業が世界で初めて商業生産を開始し、三洋化成工業の売上高全体の2割を占める製品でしたが、近年は収益性が悪化していました。

その理由は以下の2つです。

  • SAPは世界的に需要が伸びているものの、供給の方が過剰であること
  • SAPの機能面でも安価な中国勢との差が縮んできていること

同社はSAP事業の撤退に伴って数年にわたり合計で約200億円の特別損失が発生する見込みで、2023年度は最終赤字になる見通しです。

ニュース出典元

三洋化成工業:プレスリリース

⑥三井化学がフェノール生産設備の一部を閉鎖

三井化学は現在、以下の3つの拠点でフェノールを製造しています。

  • 大阪工場(関西)
  • 市原工場(関東)
  • 上海(中国)

このうち、市原工場のプラントを遅くとも2026年度までに停止すると発表しました。

のこる大阪工場と中国では生産を継続するものの、国内のフェノール生産能力は半減する見通しです。

同社はかねてより石化事業の再編を過去十数年にわたって行っており、今回のフェノールプラントもその一環に過ぎないようでして、今後も引き続き資本効率を高める取り組みを継続するとのことです。

ニュース出典元

三井化学:プレスリリース(2024/4/4)

⑦ENEOSなど、古紙由来バイオエタノール事業化へ

国内石油大手のENEOSと印刷大手のTOPPANは古紙由来バイオエタノールの事業化に向けた実証実験を開始することを発表しました。ENEOSとTOPPANは2021年から共同で古紙を原料とした国産バイオエタノールの事業化について取り組んできました。

バイオエタノールは食品と競合しない製造法をいかに確立するかがポイントになりますが、原料ソースの部分を古紙加工の知見を持つTOPPANが、糖化の部分をENEOSが担当します。

TOPPANとしては大規模な古紙を集めることができ、かつ再生紙への転用がそもそも難しい離型紙や端材を活用することでサステナブル事業に貢献する狙いがあります。

また、バイオエタノール事業化のボトルネックとなるコストについてはENEOSが大規模化を検討してコスト低減を狙います。同事業は2030年以降の実用化を目指すとのことです。

コメント

国産バイオエタノールがもし実用化できれば、資源を持たないという大きな欠点を持つ日本の弱点を克服する強力な切り札となりうるため、ぜひ頑張ってほしいと思います。

ニュース出典元

TOPPAN:プレスリリース(2024/3/1)

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